上げたり下げたりに役立つけれど注意を怠らずに 【海の道具】
船を停泊させるには、桟橋や岸壁のような陸地にロープで繋ぎとめるか、アンカーを海底に沈めて停めるかどちらかしかありません。アンカーで船を停める事を投錨といって、船を停泊すること全体をそう呼ぶ場合もあります。あの重たいアンカーを巻き上げたり沈め落とすときに活躍する機器、それがアンカーウインチ。
今は電動のものばかりですが、パイレーツが暴れまわるような映画を見ると、太い柱にロープを巻きつけ、水夫たちが横竿を抱えて柱をぐるぐる回っているシーンにあるように、人力の時代もありました。そんなシーンを見ても判るように、アンカーを引き上げるのは大仕事なんです。
客船やタンカーほどではないが、プレジャーボートにおいてもアンカーウインチは大きな戦力となります。揺れるデッキ上で踏ん張りながら重たいアンカーやチェーン、水をたっぷり含んだロープを引き上げるのは並大抵のことではないし、根掛りなどしようものなら、腕も腰も悲鳴をあげます。
そんな力強いアンカーウインチですが、海のプロともなるとアンカーを上げることだけにしか使わないようなもったいないことはしません。例えば、貝を大きな鉄製のかごで掻き揚げるシジミ漁などでは、かごに取り付けた棒をアンカーウインチのローラーにあてがって、引っ張り上げる手伝いをさせることがあります。
ただ、そんな便利なアンカーウインチも、注意しないと大きな怪我に繋がることも。最たるものが、ロープと共に指などを巻き込んでしまう巻き込み事故。
意外に思うかもしれませんが、事故の多くはアンカーウインチが回っているから起きるのではなくて、ロープがウインチのドラムから滑ることで、ロープを握った指をドラムの間に挟みこんでしまうことから起きるケースが多いのです。アンカーを引き上げているときは必ず、いつでもロープから手が離せる準備を怠らないことが大事です。
手放す勇気は押入れの整理のときだけの心がけではない、ということ。