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クエの延縄。見よう見まねで覚えた魚獲りの技術 【ニッポンの魚獲り】

 島根県西部、かつての石見国の中心地であり城下町でもある浜田市。冬場は北寄りの季節風で時化が続く山陰地方有数の水産都市です。

 河瀬貴博さん(44歳)が漁業の道に入ったのは、素潜りによる採貝業漁師だった父親が操業中に海で亡くなってから。通常なら、父親から漁の手ほどきを受けながら一人前の漁師になるというのが一般的な成長過程ですが……。
 「他の漁師さんのところで教えてもらって……というか、見よう見まねでおぼえたというのが正直なところですね」(河瀬さん)。

日本化に陽が沈む。延縄漁は日没から始まる

 そんな河瀬さんが、最近取り組み始めたのがクエの延縄はえなわ漁。ここ浜田周辺ではクエ漁は一般的ではなかったといいます。

「他の人間と同じことをしていたんじゃ儲からない」という河瀬さんは、これまでにも新しい対象魚や漁法に積極的に取り組んで来たといいます。2021年の11月に進水した〈貴琳〉(ヤマハDY-39M-1A)は、このクエの延縄漁のために新造した船です。ちょっと艶のある船名の由来は愛娘の名前からとったそうです。

河瀬さんの愛艇〈貴琳〉(ヤマハDY-39M-1A)

 クエ漁は6月あたりから波の悪くなる12月まで。それ以外は採貝業でアワビやサザエ、イカ釣り船に乗ることもあるそうで、常に様々な漁に積極的に取り組んでいくというのが河瀬さんのスタイルです。

「クエ漁で重要なのは潮流の読み」だという河瀬さんの船には潮流計が設置されています。
 「深いところ、中段、浅いところの三段階で潮の流れがわかるようになっているので、そこを睨みながら延縄を入れる場所と角度を決めています」

延縄の準備。一本の幹縄に餌をつけた枝縄ををぶら下げて獲物を待つ

 河瀬さんがクエ漁を始めたのは2015年ごろから。SNSを積極的に使用し、釣果を上げることで口コミで評判が広がり、大阪や京都などの料理店に直接納品するルートもできあがってきました。

「以前からの漁で揚げたアワビやサザエなんかは漁協を通じて出してますけど、自分で開拓したものについては直販することが多いですね。とるだけでなく販売についても攻めが必要だと思っています」と笑う河瀬さん。

釣り上げた魚の処理は商品価値を高める

 河瀬さんは漁師を志望するアイターン求職者のモニター漁師としても活躍しているそうで、河瀬さんの攻めの漁は次の世代にも受け継がれ、それが新たな伝統となっていくのかもしれません。


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