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まもなく長期休暇。とりあえず “散歩しない?” 【キャビンの棚】

 もうすぐゴールデンウィークですね。ロングバケーションです。業種や立場にもよるでしょうけど、10連休、なんていう人もいるようです。一ヶ月のうち3分の1も休みがあるのです。といっても、このご時世です。遊びに行く予定のない人もたくさんいるでしょうし、いつもと変わらぬ、いや、それ以上に仕事に打ち込む人もいるでしょう。ただ、世間がなんとなく浮き足立つ時期というのはいいものです。たとえ忙しくても、心が海のように広いあなたのことですから、少し幸せな気分になるはずです。

 さて、ロングバケーションと言えば、真っ先に大瀧詠一を思い浮かべる人も少なくないでしょう。今から40年以上前、1981年にリリースされた「A LONG VACATION」(ロンバケ)は、間違いなく「歴史的名盤」です。“新人類”なんて呼ばれ、ある時代を面白おかしく生きてきた世代の人々は、今でも「君は天然色」や「恋するカレン」なんて曲を口ずさみます。「君は天然色」では“渚を滑るディンギー”なんてフレーズも出てきて、ヨット乗りを喜ばせてくれます。セールボートでもヨットでもなく“ディンギー”なんです。一抹の潮気に共感してしまう、といったところです。

 ここに取り上げた「A LONG VACATION from Ladies」は、そんな歴史的名盤を、大貫妙子、今井美樹、尾崎亜美、太田裕美ら、錚々そうそうたる女性アーティストたちがカバーしたトリビュート・アルバムです。それでも発売は“ひと昔前”の2009年。大滝詠一も存命していました。

 オリジナルと同じ曲が収録されているのですが、それぞれに味わいがあって素敵です。8曲目に収録された「恋するカレン」は大瀧詠一の8枚目のシングルで失恋の傷心を歌い上げた名曲ですが、「A LONG VACATION」ではこの曲の直後、9曲目に「FUN×4」(“ファンバイフォー”なのか“ファンファンファンファン”か、読み方は謎とされています)という曲が続きます。こちらはというと、トントン拍子で素敵な女の子とお付き合いすることとなり、気づいたら結婚して子宝にも恵まれちゃいました、という昭和男子的価値観による幸福感をストレートに歌い上げています。この曲順の妙。救いがあります。なんともいえません。
 オリジナルの「FUN×4」では、女性の声で「散歩しない?」というフレーズが入ります。実はこの声の主は太田裕美です。そして、この「A LONG VACATION from Ladies」では「FUN×4」を太田裕美がカバーし、「散歩しない?」の声の主が大瀧詠一本人という仕掛けになっています。そんな粋な遊び心もいいですね。

 実は大瀧詠一が音楽的影響を受けたという植木等も、大瀧詠一のプロデュースで「FUN×4」をカバーしています。これももご機嫌な仕上がりです。ちなみにこちらの「散歩しない?」は渡辺満里奈。
 え! なんですって? 植木等を知らない? こりゃまた失礼いたしました!

※この記事は過去の「Salty Life」の記事に加筆・修正して掲載しています。


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