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聞けば聞くほど楽しい!スティーヴィーの全盛期をまとめたベスト盤「Original Musiquarium I」 【キャビンの棚】

 60年代に公開されたビーチを舞台にしたコメディ映画「Bikini Beach」のラストシーンに歌手役で出演する若かりし日のスティーヴィー・ワンダーを見つけました。ビーチにいる若者達をいつもの調子で熱唱して楽しく踊らせるというシーンなのですが、演技であることは承知で、スティーヴィーの作品は楽しい水辺のひとときにぴったりだと思ってしまいました。

 そんなスティーヴィーのベストアルバムのひとつが今回紹介する「Original Musiquarium I」です。実は彼のような長い経歴をもつミュージシャン(スティーヴィーは今年活動60年目)はベストアルバムもたくさん発売しているものですが、コアなファンや批評家から圧倒的な支持を受ける彼の全盛期ともいえる70年代の作品から集めたのが本作になります。

 彼にとって70年代といえばプロデュースの権利をレコード会社から自身に戻し、セルフプロディースをはじめた時期です。ブルース、ゴスペル、ジャズ、ソウルといった黒人音楽をベースに、ロックやクラシック、ラテンなどを融合させる彼自身のスタイルを確立。4年間で17のグラミーを受賞する神がかり的ともいえる活躍をみせた1970年代をコアなファンは「黄金時代」といったりします。

 ちなみにタイトルにある Musiquarium は音楽(Music)と水族館(Aquarium)を組み合わせた造語です。カラフルな魚が気泡を吐いて音符のように見えるジャケットが印象的ですが、一度聞いたら思わず口ずさんでしまう収録曲はもっと印象的です。

「Original Musiquarium I」
スティーヴィー・ワンダー
レーベル:Motown
参考価格:3399円(税込)

 それにしても盲目の彼は一体どうやって美しい歌詞を生み出したのでしょうか。ゆったりと海でも眺めながら、じっくりと聞いてみてほしい。あまり海に関わる内容はでてきませんが、「彼のものごとに対するこの感受性の100分の1でも海にもっていけたらいいよな」なんて、知り合いの海好きはいっていました。

「自分を理解してもらうには、自分の音楽を聞いてもらうのが1番だ」と本人も語っていますが、スティーヴィー初心者にはとりあえず手にとってほしい1枚です。

文:上野就史(うえの なりふみ)
渋谷の小さなミュージックバーの元店長。30歳直前に渡欧し、カナリア諸島テネリフェ島に滞在。帰国後の編集プロダクション勤務で海をますます好きになった。現在はフリーランスのライター。1984年生まれ、福岡県出身。

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