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カキをミルクで煮る— 贅沢で温かな冬の楽しみ。 【レシピ- 船厨】
カキ(牡蛎)の季節真っ盛り。西洋では「月の名にRのつかない時期にはカキを食べるな」といわれるようです。一般的にその時期(5~8月)は産卵期にあたって味が落ちること、そして痛みやすいことも理由かもしれません。いまでは年中食べられますが、やはりカキは季節感のある冬の食材なのです。
北はノルウェーから南はニュージーランドに至るまで、世界各地で養殖されていることからも、カキは多くの人々に愛されている貝であることがわかります。日本では17世紀に小林五郎左衛門なる人物が広島で地蒔き式の養殖を始めたのが最初らしいです。現在の一般的な吊り下げ式の養殖技術は大正時代になって考案され、結果、その生産量が飛躍的に伸び、旨い牡蛎を手軽に口にすることができるようになったわけです。この吊り下げ式養殖方法の考案者は堀重蔵さんと妹尾秀実さんという方だそうです。
カキを食べるたびに、これらの方々にはこの上ない感謝の気持ちがあふれてきます。
カキ養殖に関わる人物としてもう一人、お名前をあげておきたいのが気仙沼で牡蛎養殖を営んできた畠山重篤さん。畠山さんは漁業者の立場で海と川の関係に目をとめ、「森は海の恋人」をテーマに気仙沼に流れ込む河川の上流域で植林活動を行ってきました。2011年の震災でほとんどの養殖資材を流失してしまいましたが、息子さんたちが復活させ、今もカキ養殖は続けられています。
本欄の大好きなNHKの朝の連続ドラマ「おかえりモネ」でもカキ養殖と森の関係が触れられていました。いまでこそ当たり前のように認識されていることですが、栄養分の豊富な海は森が生み出すのです。
とにかく、そんな人々の努力に敬意と感謝の念を抱きつつ新鮮なカキをいかに食すか。「カキは生食が最高!」「焼きガキもその次に最高!」。 確かに。でも、生で最高の味を放つ新鮮な魚介を火を通した料理に使うのもこれまた贅沢の極み。
というわけで、ダッチオーブンでミルクシチューを作ってみました。本欄スタッフの定番にて、お薦めです。とても簡単で暖かみのある料理。濃厚なカキの風味が冬のダイニングに、ときには船のキャビンに、暖かさを増してくれます。
どうぞ召し上がれ。
「牡蛎のミルクシチュー」
■材料(ざっと4人分)
生牡蛎20個ほど(レモン汁で洗う)、にんにく大2片(みじん切り)、玉葱1/2(みじん切り)、バター300g、牛乳500cc、生クリーム100cc、パセリ少々(みじん切り)、塩小さじ1弱、胡椒適宜、小麦粉大さじ1~2(とろみを付ける場合は2~3に増やす)
■作り方
1)熱した鍋にバターを溶かし、中火でにんにく、玉葱を焦がさないように炒める。とろみをつける場合は小麦粉を大さじ1~3を好みで加えて炒める
2)1に生ガキを加え、表面に火が入ったら牛乳を加え、中火で煮る
3)牛乳が沸騰してきたら生クリームを加え、塩、胡椒で味を調え、パセリのみじん切りをちらす(生クリームが無ければ牛乳だけでもOK)
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