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家族の絆と愛が注ぎ込まれたホタテ 【ニッポンの魚獲り】

 学生時代に国内から海外にいたるまでバックパッカーの旅を続けていたという、岐阜出身の住吉健司さんが、荷を下ろし、定住を決心したのが、奥様の夫佐子さんと出会った北海道の佐呂間町。夫佐子さんの実家の家業であったホタテ養殖を引き継ぎ、すでに30年近くの月日が流れました。
 「もう奥さんには頭があがらないですよ。社長みたいなものです」と健司さんがいうと、「何言ってんの!」と笑って健司さんの尻をポーンと叩く夫佐子さん。このとても仲の良いご夫婦に、今は長男の龍之助さんが加わり、ホタテ養殖船〈第十八文丸ふみまる〉はますます明るく、楽しい仕事場になっています。

古いホタテ養殖の歴史を持つ日本最大の汽水湖

 日本最大の汽水湖・サロマ湖は言わずと知れた日本屈指の歴史を有するホタテの産地。もともとは、佐呂間別川をはじめとする14もの河川が流入する淡水の湖でしたが、大正から昭和にかけての2度の開削事業により海水を流入させたことで、海水魚が生息するようになり、また美味しいホタテが養殖できる汽水湖へと生まれ変わりました。

サロマ湖は日本最大の汽水湖。湖としても琵琶湖、霞ヶ浦に次いで第3の広さを有する

 サロマ湖のホタテの養殖方法はいわゆる耳吊り式が主流です。稚貝を籠の中で育て、ある程度の大きさになってから密植を避けて分散、最終的にはホタテをロープに取り付け、直接、湖の中で出荷サイズになるまで育成します。今は各地の養殖場で行われていますが、はじめに籠の中でホタテを育成するこの方法は、このサロマ湖で確立された技術なのだそうです。

 ホタテ養殖は、まず玉ネギを入れるネットのようなものを吊しての採苗から始まります。そして、湖面が凍るような寒い冬を2シーズン超え、夏を迎えた3年貝を出荷しています。水温が低いために、それほど大型のホタテとはなりませんが、実は、この水温の低さこそがサロマ湖のホタテの特徴を決定づけているのです。多糖類であるグリコーゲンを逃さないとのことで、平たくいうと、冷たい水の中で旨味をしっかり体内にため込んでいるわけです。

耳吊りにしたホタテを引き上げていく

 私たちが取材を目的に船に乗せてもらったのは、昨年の夏のこと。住吉さんファミリーと、龍之助さんの幼なじみで手伝いに来た岡谷さんの4人を乗せた〈第十八文丸〉は、3年貝の水揚げ作業のため、母港の富武士とっぷし漁港から沖合の養殖場を目指しました。

家族でひとつの仕事に取り組む素晴らしさ

 〈第十八文丸〉はV型ドライブを採用したDV-47A-0Aというモデルの漁船です。V型ドライブとは、エンジンを船体の後方に設置し、プロペラ軸をいったん前方に伸ばしてからギアを使ってV型に折り返して後方でプロペラを回す仕組みです。ブリッジは、一般的な漁船に比べると前方に寄せられていることが分かります。このタイプがサロマ湖のホタテ養殖作業船の主流です。とにかく船体中央部の甲板部分を有効に、広く活用できるため、沖ではまるで工場のような機能性を発揮してくれます。

デッキのすべてを使っての水揚げ作業

 作業中の4人の手は休むことなく、効率的。それでもコミュニケーションをとりながら、何やら楽しそうでもあります。夫佐子さんは、取材チームが作業の邪魔にならないよう気遣い、注意しながら声をかけてくれ、さらに龍之助さんの友人にも的確な指示をだしています。まるでボースン(水夫長)の風格。

龍之助さんは幼少の頃から船に乗り、両親の仕事を見てきた

 ホタテを満載にして港に戻り、貝を洗浄し出荷準備の作業を終えると、作業小屋で昼食です。健司さんが古い写真を見せてくれました。そこには幼い龍之助さんが一緒にホタテの作業船に乗っている姿がありました。
 家族で同じ仕事に取り組むことの魅力が伝わります。そして、サロマ湖のホタテが美味しい理由もなんとなくわかったような気がしたのでした。



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