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験担ぎというなかれ。土用の鰻で暑い夏を乗り切ろう 【船厨- レシピ】

 2022年の「土用の丑の日」は2回あって、最初は7月24日、そして2回目は8月4日。詳細は省きますが、本来「土用」は春夏秋冬の年4回あり、それぞれに丑の日があるのですが、今では土用の丑の日といえば、夏のそれを指します。
 丑の日にうなぎを食べる習慣は、丑の日に「ウ」のつくものを食べると夏負けしない、というのが由来。ちょっと無茶な印象を受けるこの由来も、実際、「ウナギ」となれば高タンパク、ビタミンも豊富で、栄養価の高い食材ですから、一応は理にかなっているのであります。

 ところで、この鰻、昨今、庶民にとってはめったに口にすることのできない高級食材ですが、時代の流れとともにその価値には変遷があるようです。

 池波正太郎の人気時代小説「剣客商売」に、又六という男が登場します。彼は鰻の辻売りを生業としていました。時代設定は江戸時代の中期です。小説からは、鰻といえば「脂っこくてとても食べられたものじゃない」という価値観が伺えますが、炭火であぶって充分に油を落とした鰻は、グルメでもある主人公の秋山小兵に言わせるとけっこうな美味で、又六が焼く鰻を好んでいます。また安くもあり、庶民にはなかなかウケが良かったとされています。

 浅田次郎の「天切り松 闇がたり」シリーズは、大正時代に活躍した盗賊を描いた小説です。これには、上野・池之端の鰻割烹「伊豆栄」が頻繁に登場します。江戸末期創業の実在する老舗ですが、大正時代にはすでに鰻は高級品になっていたことが、小説からは窺えます。高級感を演出する重箱を使った「鰻重」が登場したのはこの頃のようです。

 庶民の食べ物か、高級品か、それはさておき、いずれにせよ、威勢を付けたいときや、特別な出来事があったときなど、鰻は景気づけの小道具として使われてきたのです。

崩すのがもったいなくなる「ひつまぶし」。それでもでもかき混ぜて茶碗によそっていただきます

 さて、蒲焼き、白焼き、せいろ蒸し、それらをご飯に載せた鰻丼、などなど、鰻の食べ方もいろいろです。「ひつまぶし」は、名古屋発祥という説が有力です。拙子が初めてお目にかかったのは、ヤマハが国際ヨットレース・アメリカズカップに深く関わっていた1990年代、シンジケートのベースキャンプがあった蒲郡(愛知県)の食堂でした。いまでこそ広く知られている「ひつまぶし」ですが、当時、鰻重と鰻丼しか知らなかった関東生まれの若造にとっては衝撃的でした。

 今回は、スーパーで、出来合いの鰻の蒲焼きを買って、その「ひつまぶし」にしてみました。とりとめもなく鰻の話をしましたけれど、むしゃむしゃと鰻を頬張っていると、なんだか特別な元気が出てくるような気がするのは確かです。

「鰻のひつまぶし」
■材料 (3~4人分)
鰻の蒲焼き2尾、ご飯2合、みつば適宜、小ネギ適宜、だし汁2~3カップ、わさび適宜、山椒適宜
■作り方
1)市販の鰻の蒲焼き(もちろん自分で焼いても)の皮の方を下にしてフライパンに入れ、中火で皮がぱりっとするまで焼く
2)炊いたご飯に鰻のタレを入れてかき混ぜ、櫃に入れる
3)1の鰻を食べやすい大きさに切り、櫃に入ったご飯の上に敷き詰めるようにして乗せ、山椒をかける
4)三つ葉を添えて出来上がり。最初は茶碗によそってそのまま食べ、二度目は同じく茶碗によそい、熱いだし汁をかけて食べる


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