ノリ養殖の合間に有明海で行われる夏のクラゲ漁 【ニッポンの魚獲り】
高級なノリ(海苔)の産地として知られる有明海。福岡・佐賀・長崎・熊本の4県が面した豊潤な海には、シーズンともなるとノリ網がところ狭しと並びます。
有明海のノリ養殖が一段落するのが4月末で、再び作業が始めるのが9月1日。その間に行われるのがクラゲ漁です。食材としては全国的に馴染みのないクラゲですが、有明海沿岸部では昔から珍味として居酒屋や家庭で親しまれてきました。
地元ではアカクラゲと呼ばれているビゼンクラゲは、傘の直径が40~50cm、重さが10kgほどになる大型のクラゲで、触手の部分をぶつ切りにして三杯酢で和えたものは、酒のアテに抜群だと地元の辛党に人気です。
昔から「お盆になるとクラゲが出る」と言われているように、海水温が最も高くなる時期がクラゲの活動期で、ちょうどノリ養殖の作業が一段落している時期と重なっているため、福岡県のノリ漁師さんたちが「小遣い稼ぎ」とばかりに真夏の海に繰り出します。
潮の流れに沿うように網を入れた網を潮の下手から巻き上げていくと、網に沿って流れてきたクラゲが面白いように水揚げされていきます。船上に揚げられたクラゲは専用の機械で水洗いされ、触手だけを切り離して収穫されます。
傘の部分も食用になるようですが、単価が安いため多くの場合は収穫されないようです。
「あくまで本業は海苔養殖ですから。その合間に暇な若い連中をフネに乗せて作業をしているんです」と言うのは〈一心丸〉(DW480-0A)の船主の田中智幸さん。
「(クラゲは)いつどこに出て、いついなくなるかわからないからねえ。今日はそこそこ獲れたけど、まったくダメなときもあって。養殖のようなわけにはいきませんよ」
取材したこの日は触手部分だけで3トンの水揚げ。このクラゲ、最近では中華料理の食材として、中国への輸出も増えているといいます。