牡蠣フライを気軽に口にできるのは奇跡なんです 【船厨- レシピ】
とんかつに代表される「フライ」は不思議な料理です。日本の「洋食」レストランに生まれ、発展を遂げたのですが、海外にこうした料理は実在しません。定義にもよりますが、つまり「洋食」屋さんのフライは「和食」なのです。そしてそれを裏付けるかのように、フライ料理の代表格「とんかつ」を供する多くのレストランは、「和食」の風情を前面に出しています。
さて、「牡蠣フライ」はというと、もちろん、これもまた日本生まれの洋風和食です。そもそもオイスターに火を入れる文化は西洋にそれほどありません。彼らが愛する、もちろん私たちも愛する「生牡蠣」の素晴らしさは言うまでもありませんが、たとえば居酒屋などのランチメニューに「牡蠣フライ」が登場すると「生牡蠣」以上に、牡蠣の「旬」の訪れを感じる人が多いに違いありません。
牡蠣は各地で度重なるピンチに遭遇しています。大きな地震や猛烈な台風が日本列島を襲うと、牡蠣養殖は大きな損害を被ります。養殖筏が破損したり流されたり、河川からの泥流の流入が牡蠣の育成に大きく悪影響を与えたとのニュースも何度も目にしたり耳にしてきました。それでも各地で稚貝を供給し合ったり、施設の復旧に協力をしたりと、牡蠣は復活を遂げるのです。それは日本に限ったことでなく、牡蠣は世界を駆け巡り、まさにグローバルな食材として存在しています。そのことを思うと、冬になって、こうして食卓に牡蠣が届くのは奇跡だと思います。感謝なことなんです。
熱いフライを口の中でハフハフしながら牡蠣の濃厚な味を楽しむ。秋から初春にかけて、季節限定の日本ならではの幸せです。