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競技だけではないんです〜楽しいセーリングスポーツのいろいろ。 【We are Sailing!】

 皆さま、こんにちは。広報担当のメンバー、Mです。今回はちょっと470級の競技から離れて、異世界のセーリングについてお話ししたいと思います。

 昨年10月、ヤマハセーリングチームの髙山大智/盛田冬華、磯崎哲也/関友里恵の2チームが参戦した「2023年国際470級世界選手権」が開催されたイスラエル有数のリゾート地であるスドット・ヤム。そのビーチを埋め尽くしていたのは、おびただしい数のカイトボードでした。世界選手権のために世界中から集まった470級よりも遙かに多い数のカイトボードが、平日にも関わらずスドット・ヤムの海岸を我が物顔で走りまわっていました。

レース中の470級に混じってカイトが舞うスドットヤムの海辺
ロープで繋がったカイトの下はこんな感じです。板を履いたまま空も飛べます

 470級のレースが終わり、撮影を終えた我々取材スタッフがホテルの窓から夕日を撮ろうと望遠レンズを構えたところ、日没間際の薄暮の中にカイトのセールが舞っていたのは印象的でした。彼らの多くは競技を目的としているわけではなく、ただ “fun to sail”で楽しんでいるだけなのに、否、だからこそというべきでしょう、日が暮れてもサッカーを続ける小学生のように、喜々として水面を走り続けていました。

陽が沈む頃になっても、海の上は遊ぶ人でたくさん(スドットヤム/イスラエル)

 いま、地中海を中心としたヨーロッパのセーリングトレンドの主役はカイトボードとなっています。パラセーリングのような形状のセール(カイト)を、2~5本のラインでコントロールし、ウェイクボードのようなサイズのボードをストラップで両足の固定し、水面から空中(一度ジャンプしたら数十秒フライングすることもできる)を自由自在に走り回ることができるのがカイトボーディングの魅力です。そのスピードは平均的なカイトボーダーで25~40km/s、プロフェッショナルなら100km/s近くまで出すことができるといいます。

 2024年のパリ大会からはセーリング競技の新種目として(フォーミュラカイト・クラス)採用が決まっていますが、乗り手のアイデンティティーはセーラーというよりもむしろボーダーなので、順位を争うレース競技よりも、サーフィンのようにパフォーマンスを競い合う形態の方が向いているのかもしれません。

セーリングしながら釣りだって楽しめる

 こう見ていくと、セーリングのギア(道具)も先鋭化の一途をたどっているように見えるかもしれませんが、カイトボードとは正反対のベクトルにも新しいギアは登場してます。
 その代表格が Hobie Mirage Adventure Island (ホビー・ミラージュ・アドベンチャー・アイランド)です。このHobieというブランドは、ホビー・アルターという伝説のサーファーが立ち上げたカタマラン(双胴艇)ディンギーのビルダーで、80~90年代には世界中のマリンリゾートにアクティビティとして採用されていたので、聞き覚えのある方もいるのではないでしょうか?

 このリゾート・カタマランのブランドが今は、足漕ぎカヤックに力を入れているのです。この足漕ぎのシステムがミラージュと呼ばれているもので、自転車のペダルのような動きで、2つのフィン(ヒレのようなもの)がバタバタと左右に動いて推進力を発生させるシステムなのですが、これが想像の斜め上の推進力なんです。最新のシステムではバックギアも装備されて、前後左右自由自在に海面を動くことができるのです。

 これに飛びついたのが、生粋のセーラーよりもむしろフィッシング愛好者たちでした。モーターボートを買わずとも、自分の好きな場所でキャスティングでき、腕でパドルを漕ぐカヤックと違って脚の大きな筋肉で漕ぐため疲れにくい。さらにルアーフィッシングなどで要求される微妙な位置どりも行えるとあって、瞬く間に人気商品となったようです。

こちらが「Hobie Mirage Adventure Island」。足こぎカヤックとセーリングディンギーの融合

 その足漕ぎカヤックにマストを立ててセールを付けたタイプが、先述の Hobie Mirage Adventure Island です。もともとセーリングカタマランのブランドだけあって、このシステムが実に良くできているんです。セールの出し入れや細かい調整は全て手元にリードされたロープでトリムできるため、椅子に座ったまま全ての作業が行えることに加え、急に風速が上がったときなどは、手元のロープを引くだけでセールをマストに巻き取ることができるので、セーリングの初心者でも恐怖を感じることはありません。

 もっとも優れた部分は、困ったら足漕ぎで進むという選択肢が用意されていること。もともと足漕ぎカヤックがベースなので、微風ならセーリングよりも速いスピードで進むことができます。ちょっと風速が上がれば、カヤックとは比べものにならないスピードでラクラク海面を移動することができます。

 セーリング未体験の人であっても、1時間もあれば自在に走り回れてしまうという異次元のギアは、セーリングにあった高い敷居を一気に取っ払ってしまったのです。
 ちょっとばかりHobieのことに文字を割きすぎてしまった感がありますが、お許しを。実は広報担当の一員である私、Mは、このセーリングギアの共同オーナーの一人でありまして、それ故に、自慢させていただいた次第です。

こちらも手軽なセーリングギア・フランス製の「TIWAL」。艇体はインフレータブル(ゴムボート)です

 ベテランヨットマンであっても乗りこなせないカイトボードのようなものもあれば、ヨットなんか見るのも初めてという初心者でもその日のうちに一人で乗りこなせてしまう Hobie Mirage Adventure Island のようなものまで、セーリングの世界は多様です。これぞ究極のダイバーシティ。愛好者の数は決して多くないにもかかわらず、これだけ多様性が実現されている世界も珍しいと思いませんか。そのトレードオフとして、それぞれのギアの単価は高くなってしまっているんですけどね。

 冒頭で「470級とは異世界」といようなことを書きましたけど、もともとは、いや、今だって、セーリングチームのメンバーたちは風と一緒になって走るセーリングが楽しくて、楽しくて、そして大好きなんです。
 セーリング未経験者の方も、明日からセーリングを始めたいと思ったなら、ぴったりのセーリングギアが見つかるはずです。


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