お尻も痛いが、お耳も痛い、ボートの座席 【海の道具】
ボートには、もちろん他の乗り物と同じく操縦席があり、そこにはドライバーズシートがあります。ところが、ボートのドライバーズシート、すべてが快適というわけにはいきません。
たとえば、小型のフィッシングボートなどは、パイプにクッションを巻いただけのシートというのがざらにあります。これは「リーニングシート」というのですが、ドライバーはほぼ立ったまま、腰をもたれかけるようにしてステアリングを握ります。もちろんコストという事情もあるのですが、実際、ショートハンドでの釣行となると、操縦しながら、すぐにクルーワークや釣りにも移行しやすいという利点があります。
ただ、こうしたボートにゲストで乗船するなると、航行中はデッキ上にFRPで成型した凸部分に腰を掛けて耐えなければならないなんてこともあります。波がある中を航行すると、座っているのもたいへんで、結局はドライバーの横で、ハンドレールを掴んで仁王立ちしているというパターンになります。
海面と言うのは思いのほか硬いものです。船の長さが短くなればなるほど波の波長に影響されて、船は弾みます。
船が波頭に乗り上げた時に浮いたお尻が、波間に沈む瞬間、どーんと座っていた場所に叩きつけられることも。クッションが無いと、これはこたえます。元々割れているモノが、更に割れちまったんじゃないかと心配になるほどです。
それだけの衝撃を吸収するわけだから、しっかりとした椅子のようなシートであっても、クッションだけでは到底衝撃を吸収しきれません。そのために、ダンパーという緩衝機器が必要となってくるわけです。バネの力でショックを吸収するものから、エア式のものまでそれぞれありますが、難しいのは、その硬さ。柔らか過ぎると跳ねて安定しないし、硬すぎるとクッションの意味がありません。
浮き上がりには素早く尻に追従し、沈み込むときはじんわりと衝撃を吸収することが要求されます。
部下からの要望や取引先からの要求には素早く対応し、会社上部からのプレッシャーはぐっと自分の身に抱え込んでから関係各処へと降ろしていく。そんなダンパーのような中間管理職、どこかにいそうですね。