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「ホーン」よ今夜もありがとう 【海の道具】

 車ではクラクションと呼ばれますが、船の場合は汽笛と呼び、少しロマンチックな雰囲気になります。他船に注意を払ってもらうために鳴らすのだから、その用途に変わりはありませんが、さらに霧笛などと称されれば、少々演歌っぽくなるけれど、港情緒が目に浮かんできたり。
 年末のカウントダウンで、港に停泊している旅客船や大型貨物船などがいっせいに汽笛を鳴らしたりすると、別に船で故郷を旅立ったわけでもないのに、なにやら郷愁にも似た思いが込み上げてきます。ことほど左様に、マリンのホーンは人の心に響くのです。
 実際にボートで使用するホーンは、本船のように排気を使った大音量のものではありません。エアガスボンベを使った簡易なものから、トランペットのような形をしたものや、交通整理などで使うハンディマイクみたいなものもあります。ちょっと郷愁とは離れてしまってすみません。

エアガスボンベで慣らすタイプのマリンホーン

 見た目はともあれ、使用目的はやはりクラクションであるわけですが、車よりも重要度は高く、 また、鳴らす回数や長さによって意味を持っているところも車のホーンとの大きな相違点です。

 基本、車であれば対向車を信じ、自分も交通法規を守って車線を走れば衝突は避けられます。けれど、海上にはセンターラインもなければ、ガードレールもありません。見通しの利かない夜間航行では、自船の360度全方向から船が突っ込んで来てもおかしくはない状況なのです。
 目を凝らし、抜かりなくワッチを怠らないことは当然ながら、やはり音での注意喚起は有効です。
 車だと、なんとなく苦情を訴える手段のような感じがしてしまうホーンですが、ボートは自己防衛的な意味合いを持ちます。お互いの存在を教えあう汽笛はどこか車のそれより柔らかく聞こえるのは気のせいでしょうか。


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