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磐田はふわふわの釜揚げシラスの産地です。 【ニッポンの魚獲り】

 静岡県の遠州灘、特にヤマハ発動機の本社がある磐田市沖は全国的に知られたシラスの好漁場です。天竜川をはじめ馬込川、太田川など幾つもの河川がこの漁場に栄養分豊富な水を注ぎ込んでいます。漁場はそう遠くはありません。シラス漁船が網を引いているシーンは、サーフィンの盛んな豊浜海岸(福田町)などの砂浜からも目にすることができます。その豊浜海岸にあるレストランでは、茹でたての、ふわふわの釜揚げしらすが名物です。もちろん他にも食べられるところ、購入できるところがあって、ヤマハ発動機の社員にも、3月のシラス漁の解禁を待ち望むファンが大勢います。

 夏のある日、この遠州灘のシラス漁に同行しました。

 取材した年は、遠州灘のシラスは不漁が続いていました。地元の漁業関係者の話では「冷水塊が接岸したためではないか」とその原因について語っていました。
シラス漁に従事する人々は、獲れなければ漁を休んで数日後に再び船を出して群れを探る、そんな日々が続いていました。

 「こんなに獲れない年も珍しいよ」
 苦笑しながら語っていたのは福田港の「長久丸」の親方、伊藤和友さん。長年にわたってシラス漁に携わってきたベテランで、後継者となるふたりのご子息の後継者とともに出漁していました。後継者の2人は焼津の水産高校を卒業後、父親のシラス漁船に乗り込み修行を積んできました。

 「最初に乗り始めたころは父親に怒られてばかりでした。仕事のときはこわい人。そして勘がいい。経験の差を感じます。僕たちはまだまだ」というのは手船の船頭を務めるご長男。
 「もちろん獲れた時は嬉しいけど、シラス以外の漁獲、たとえばタカアシガニ、サメ、マンボウなど珍しいものが網に入っていたりすることがあって、それも楽しいんだよね」とシラス漁の魅力について話してくれました。

網を投入。長いときで網は300mの長さ。その先に袋網(魚が溜まる網)がある
網船と手船の息のあった連携もシラス漁では重要。長久丸ではそれぞれ親子が船頭

 シラス漁は網船と手船の2隻1組で漁を行います。この日は午前4時に出港。沖に出ると、まずシラスの群れを探します。経験と勘、魚群探知機を駆使しながらの作業。ここぞというポイントで網船から網を投入し、片側のロープを手船に預け、2隻で網を曳いていきます。魚群に合わせ、ロープの長さやおもりを調整して網を曳くタナを調整しています。

 網を上げるのは約1時間後。手船からロープを網船に戻し、網船の後部デッキに設置されたローラーで網を巻き上げていきます。

船尾で網を巻き、その後前方に網を移してシラスを引き上げる

 シラスは鮮度が鍵。小さいながらも形にこだわります。ズタズタになったようなシラスでは商品価値が下がってしまうのです。網を上げてからシラスを樽に移すまで、作業は慎重に行われていきます。

船首部のデッキで樽にシラスを移す。オーニングはシラスの鮮度を保つために欠かせない

 さて、遠州灘のシラス漁は3月21日から翌年1月14日までが漁期。この年は不振だったシラスですが、今年の漁の初日は例年並みの水揚げとのニュースを目にしました。その後はどうなのでしょう。

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