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身を削る忠義者 「アノード」 【海の道具】

 科学音痴にとって、特に電子系の話は目に見えないだけに不得手です。そんな人間が無謀にもアノード(防食亜鉛)について語ろうと思います。
「えっ?金属の話が何で電子と関係がある?」と思われた方、あなたもきっと同類なので少し安心です。

 海水に浸かった鉄が腐食する現象を防ぐために使われるのがアノードというもので、例えば船外機のロワーとか、プロペラシャフトなどに取り付けられます。そして、なぜ亜鉛の塊が鉄の腐食を防いでくれるのかといった話から、電子が関わってきます。

 海水による鉄の腐食は、表面が海水との化学反応によって電子が失われ、イオン化されたことで、金属面からイオンがボロボロと脱落してしまうことから起こります。
 電子を失った鉄の原子は、プラスの鉄イオンとなり、失った電子を取り戻そうとして海水中の酸素や水と結合をしていき、最終的に出来上がるのは酸化鉄という、つまりは錆なのです。
 細かい話は取っ払い、だったら鉄の電子の流出を防げば錆びないだろうと考えたのが科学者の方達というわけです。

 どうもイオン化しやすい金属と、しにくい金属があるらしいということで、それらが接している場合、まずはイオン化しやすいほうから変化します。つまり、安易な方に流されるのは人間ばかりじゃあないようで、そんな人間臭い現象(?)を利用して、鉄よりイオン化しやすい亜鉛を鉄に接触させておけば、亜鉛が先にダメになり、全部ダメになる前に亜鉛を交換してやれば、鉄は安泰のまま、ということなのです。

 つまり亜鉛は鉄の代わりに身を削り、犠牲となった挙句捨てられる消耗品というわけ。なんとも健気な亜鉛の塊に、せめて交換するときくらいは感謝の気持ちをいだこうじゃありませんか。


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