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美しい“言葉の海”を泳いでみませんか。 【キャビンの棚】

 日本語には、海にまつわる美しい言葉がたくさんあります。見渡す限りの青を想わせる蒼海、波のたびに、ざわざわと聞こえる潮騒、月が水面に作りだす月の出潮など……海にまつわる言葉を知ったら、ふと海に戻りたくなりませんか?

 日本語を美しい写真とともに勉強できるのが、雷鳥社の「辞典シリーズ」。ロングセラーのきっかけとなったのが、その第1弾である本書「海の辞典」です。著者は水中カメラマンの中村卓哉さん。波や潮、風や雲など自然科学的なものはもちろん、ことわざや名言など、さまざまな海にまつわる言葉がまとめられています。

 「日常のなかにある音や風、ことわざや心模様など、目では見えない表現までもが海とともにつながっている」と著者は言います。パラパラとページをめくってみると、私たちが何気なく使う言葉の中に、海にまつわるものがとても多いことに驚きました。そんな美しい言葉をさりげなく使ってみたいものです。

 しかし、日本語は難しい言語です。ただ言葉を見たことがあるくらいであれば、正しく使うのは難しい。たとえば、海のブルーをしめす、青、蒼、碧。どれも「あお」と呼びますが、「蒼」は深く濃い色で、「碧」はむしろグリーンに近い色です。以前、沖縄の料理人がはじめて自分の店をオープンする直前に、店名の漢字を「蒼」から「碧」につけなおしたという話を聞いたことがあります。その人にとっての南国の海は、蒼ではなく、碧だったのでしょう。

 本書はコンパクトに携行できるので、どこでも見られて便利。いつでもこれらの言葉に触れ、蓄えることができそうです。言葉の海を泳ぎましょう。

「海の辞典」
著者:中村卓哉
発行:雷鳥社
価格:1,650円(税込)

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