漁船の船底塗料に「赤色」が多いのはなぜでしょうか。 【海の道具】
船底塗料については2回目のご紹介です。船底塗料は貝や藻類などの付着を防ぐための塗料であることは1回目の船底塗料の項でもご説明した通り。そのために、船底塗料の中にはそれらの不着を防ぐ成分が含まれているわけですが、問題はその出し方です。
漁船などの業務船はプレジャーボートと違って出航回数が格段に多い。となると、貝や汚れは航行中や操業中に剥がれ落ちてしまうことも多いわけです。そうはいっても、貝などはわずか数日で付着してしまうから、それらは取り除かなければなりません。
そこで、業務専用の船底塗料は、付着防止成分がプレジャーボートのものに比べて航行時に出にくく設定されているというのです。あまり早く成分が溶けだしてしまうと、漁期の途中で船を上げて塗料を塗り直さなければなりません。そんなことになったら商売あがったりですから。
興味深く漁港をご覧になった方なら気づくかもしれませんが、漁船用の船底塗料のカラーは圧倒的に赤が多いのです。これは魚が海底から船底を見た時、目立たないから…というのは“真っ赤”なウソ。貝類の付着を防ぐ成分である亜酸化銅が赤錆色をしていることに由来して、赤い色の塗料が作られたから、というのが真相のようです。
船底塗料は今では色々なカラーが作られていますが、そんなわけだから、圧倒的に赤が多いのです。魚の色判別能力はまだ詳しくわかってはおらず、従って、今のところ、船底の色による漁獲の違いは明らかになってはいません。
それでも板子一枚下は地獄という漁師さんたちのこと、何かと験を担ぐ事が多いようで、赤は何となく縁起が良く、災いを避けてくれそうな気がする、それも塗料に赤色が多い理由かもしれません。
そのうち、魚が寄ってくるような匂い成分を含んだ船底塗料、なんてものも出てくるかもしれません。ああ、それよりも、貝の付かない色や素材が解明されたら船底塗料自体がいらなくて済むかも…。