世界で最も美しい言葉の旋律 【キャビンの棚】
このnoteの中にある「潮気、のようなもの」の先月のコラムに、ポルトガルのことがいろいろと書き連ねられていて、思わず「ああ、ポルトガルに行って魚が食べたい」などと夢見たものです。で、その記事には、もう一つ気になる音楽家のことが出ていました。すっかり焼き魚の脇役扱いでしたが、アマリア・ロドリゲスとマドレデウスです。
1999年になくなったアマリア・ロドリゲスは、ポルトガルの民族歌謡「ファド」の歌い手としてあまりにも有名で、世界で「ファドの女王」とまで崇められていました。一方、今回取り上げる「マドレデウス」は、そのファドをベースにさまざまなジャンルの音楽を取り入れながら表現するグループで、結成は1985年。以降、メンバーの入れ替わり、休止期間もありましたが、現在も活動を続けているポルトガルのグループです。日本では乗用車のCMソングに使われたことがあり、少しばかり人気が出たこともありました。
ここでお薦めするのは2005年に発売された「Faluas do Tejo 」(邦題:美しき我が故郷)。後から知ったのですが、結成当初からのボーカルで、2007年に脱退するテレーザ・サルゲイロが参加してつくられた最後のアルバムです。
ポルトガル語で書いても意味がわからないし、通じないとも思うので邦題で綴りますが、「リスボン、海の貴婦人」「テージョ川の帆船たち」「遠くの波止場」など全10曲が収められています。
正直言って、何を唄っているのか、和訳の歌詞カードを見ながらでないとわかりません。でも、このアルバムの宣伝文句にテレーザ自身の言葉として紹介されていた「(ポルトガルは)世界で最も美しい言葉を持つ国」であることに、大きくうなずいてしまいます。そして、海辺を深く感じることができます。なにしろ美しいのです。そして少しせつないのです。
ぜひ、大切な人とのディナーのときにでもかけてみてください。どこにいても、海辺の、小さな港のレストランにでもいるかのような心地になれます。