ご機嫌な贈り物 【Column-潮気、のようなもの】
「海を見たことがなかった少年」は、フランス人の作家、ル・クレジオによる同名の短編集に収められた小説です。
彼は道を走り、砂の斜面をよじのぼってゆく、すると風はますますきつく吹いて、未知の響きと匂いとを運んできた。それから、彼は砂丘の天辺に達し、すると一挙に、それが見えた。
それはあった、いたるところ、目の前に、涯しなく、山の斜面のように膨れ上がり、その青い色を深く輝かせ、間近に、そして高い波、また波があって彼の方へ押し寄せてくる。
「海を見たことがなかった少年」
(著:ル